【脂質の摂取量の目安】筋トレ・ダイエット・健康維持のために

食事

 

こんにちは!

健康オタクのセンです。

 

この記事では三大栄養素の一つである「脂質」にフォーカスしていきたいと思います。

具体的には以下のようなトピックについて話していきます👇

 

  • 脂質とは何か
  • 脂質の種類
  • それぞれの脂質が健康に与える影響
  • どんな脂質をどれくらい摂取すればいいのか

 

それでは早速見ていきましょう!

 

脂質とは何か

具体的な脂質の摂取量を見ていく前に、「そもそも脂質とは何か?」を解説していきます。

 

脂質とは三大栄養素のうちの1つであり、その中でも最もエネルギー量が多い(1gあたり9kcal)栄養素です。エネルギーを貯蔵する上で、最も効率の良い栄養素とも言えます。

脂質にはコレステロールやリン脂質、遊離脂肪酸など多くの種類がありますが、エネルギーの貯蔵などに利用される脂肪は「中性脂肪(トリグリセリド、もしくはトリグリセロール)」です。

 

そしてこの中性脂肪とは、「グリセロール(グリセリン)」に3つの「脂肪酸」が結合(化学の用語で「エステル化」)したものです。

 

脂肪はグリセロールと脂肪酸が結合したもの

14.2: Lipids and Triglycerides - Chemistry LibreTexts

Libretexts Chemistry

glycerol:グリセロール、fatty acids:脂肪酸、triglyceride:トリグリセリド(中性脂肪)

 

また、脂肪酸は炭素の鎖の結合の仕方で、大きく以下の3つに分類することができます。

 

  1. 飽和脂肪酸(すべての炭素がお互いに1つの手で結合)
  2. 一価不飽和脂肪酸(炭素の鎖の中に「二重結合」の部位が1カ所存在)
  3. 多価不飽和脂肪酸(炭素の鎖の中に「二重結合」の部位が複数存在)

 

そしてこれら3つの脂肪酸は1種類の油に対して1種類の脂肪酸で構成されているのではなく、以下のように3種類の脂肪酸がそれぞれ様々な割合で構成されています👇

 

脂肪酸組成一覧

Fat Profiles

Saturated Fatty Acid:飽和脂肪酸、Monounsaturated Fatty Acid:一価不飽和脂肪酸、Polyunsaturated Fatty Acid:多価不飽和脂肪酸

 

また、このうちの多価不飽和脂肪酸は必須脂肪酸(外部からの摂取が必須の脂肪酸)でもあり、大きく分けて以下の2種類あります👇

 

  1. α-リノレン酸(オメガ3系脂肪酸)
    →ここからエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)が作られる
  2. リノール酸(オメガ6系脂肪酸)
    →ここからγ-リノレン酸、アラキドン酸が作られる

 

上記以外の脂肪酸は私たちの体内で作り出すことができます。

 

そしてここからは、これまで紹介した脂肪酸が、それぞれ私たちの健康においてどのような影響を及ぼすのか、そして具体的にどれくらい摂取すればいいのか、順番に見ていきましょう。

 

多価不飽和脂肪酸

オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸は、様々な研究において、特に血中脂質低下作用、抗炎症作用、神経保護作用、抗血栓作用などの健康効果が報告されているということもあり、近年栄養学的関心が非常に高まっています。

よって多くの研究がオメガ3脂肪酸を積極的に摂取することの健康的メリットを報告しています(研究)👇

 

オメガ3脂肪酸の健康効果例

  • 慢性的な炎症レベルを低下させる(研究
  • 筋肉の過度な損傷から身を守り、神経筋の回復を促進させる(研究
  • コルチゾールレベルを下げ、異化作用を抑制する(研究
  • テストステロンの産生を増加させる(研究
  • タンパク質同様に、食後の筋肉の同化シグナル伝達とタンパク質合成率を増加させる(研究

 

 

オメガ3脂肪酸を多く含む食材

オメガ3脂肪酸の種類 オメガ3脂肪酸を多く含む食材
α-リノレン酸 植物系の油、葉物野菜
エイコサペンタエン酸(EPA) 魚、貝類
ドコサヘキサエン酸(DHA) 魚、貝類

 

オメガ3脂肪酸は流動性が高く、一般に細胞にとって好ましい特性であるとされています。細胞膜が流動的であることにより、ホルモンやタンパク質とより効果的に相互作用することができます。

 

それに対してオメガ6脂肪酸は、細胞膜を硬くする性質を持ち、細胞の強度を高めるという働きを持っています。

オメガ6脂肪酸が細胞膜を硬くする性質があるからといって、オメガ6脂肪酸が悪者であるというわけではありません。

実際に、オメガ6脂肪酸であるリノール酸は炎症を促進するというよりもむしろ、循環器系の健康を向上させるという研究もあります。

 

ただ、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取の比率が過度にオメガ6脂肪酸に偏ってしまうのは良くないので、オメガ6脂肪酸を適当に摂取しながら、オメガ3脂肪酸もしっかりと十分量確保することが大切です。

 

それでは、具体的にどれくらいの量のオメガ3脂肪酸を摂取すれば良いのでしょうか?

 

EFSA(欧州食品安全機関)が発表したジャーナルによると、オメガ3脂肪酸の推奨摂取量は、DHAとEPAを合わせて250~500mgであるとしています。

しかし、この摂取量はあくまで病気にならないための最低限の量であり、実際にはより多く摂取した方が健康に良いと考えられます。

 

実際に、こちらの研究では1日最大4gまでのオメガ3脂肪酸の摂取が、心血管系の健康において効果があることが分かっています。

また、アスリートを対象にした研究では1日あたり2g以上の摂取が、筋肉の回復や運動のパフォーマンス向上において効果的であったとしています。

 

そこで、このブログではオメガ3脂肪酸は少なくとも2g以上の摂取を推奨します。

この2gという摂取量を満たす目安としては、1週間の間に脂質を豊富に含んだ魚(サバ、シャケ、ブリなど)を700g食べれば必然的に目標摂取量をクリアできると考えて大丈夫です。

 

また、この「1週間の間に700g」という数字は、各曜日ごとどんな配分でも問題ないです。

例えば、もちろん毎日100gの魚を継続的に摂ってもいいですし、極端な話1日に700gの魚を食べて残りの6日間は魚を食べない、という感じでも大丈夫です。

というのもオメガ3脂肪酸は細胞膜に取り込まれて蓄積されるため、基準量さえ満たせば毎日摂取する必要はないからです。

 

オメガ6脂肪酸

オメガ6脂肪酸は、オメガ3脂肪酸に比べて悪者扱いされることが多いですが、オメガ6脂肪酸のメリットを示す研究も多いです。

 

例えばこの研究では、被験者に750kcal分多く摂取してもらい、そのカロリー分を飽和脂肪酸をメインにした場合とオメガ6脂肪酸をメインにした場合を比べたときに、

オメガ6脂肪酸グループの方が飽和脂肪酸グループに比べ除脂肪体重が3倍近くも多く増加し、脂肪量の増加も少なかったのです👇(下図参照)

 

 

そのほかにもこちらの研究では、共役リノール酸(CLA)とオメガ6脂肪酸のグループとで比較したところ、

オメガ6脂肪酸グループは脂肪量は変化せずに除脂肪体重が増加したのに対し、共役リノール酸グループは除脂肪体重は変化せずに脂肪量が減少しました。

このことからも、オメガ6脂肪酸は同化作用を促進させる働きがあると考えられます。

 

一価不飽和脂肪酸

一価不飽和脂肪酸についても、一定の健康効果を示す研究がいくつかあります。

 

例えば、こちらの研究では1ヶ月間日常的にオリーブを被験者に食べさせることで、脂肪量の減少が促進すると同時に、筋肉の成長も見られました。

これらの結果はおそらく炎症レベルが低下したことによるものと考えられます。

 

飽和脂肪酸

緑と白のセラミック プレートに黄色のチーズ

これまでの研究結果によると、飽和脂肪酸の摂取は筋肉をつける上で効果的だとされています。

 

飽和脂肪酸はコレステロールを作るための材料となり、そしてこのコレステロールは男性ホルモンとも呼ばれるテストステロンに変換されます。

また、一般的にテストステロンレベルの向上は筋肉の成長を促進すると言われています。

 

そして実際に複数の研究にて、飽和脂肪酸の少ない食事はテストステロン値を下げることが分かっています。

 

でも飽和脂肪酸って体に悪いんじゃないの?

ここまでご覧になって、「飽和脂肪酸の摂取が筋肉の成長に良い影響を与えるのは分かったけど、飽和脂肪酸の摂取って体に悪いんじゃないの?」と考えている人も多いとおもます。

たしかに飽和脂肪酸の摂取は動脈硬化や心臓病の原因となり、健康に悪いと言われることが多いです。

ただ果たして本当にそうなのか?をここから考察していきます。

 

まず「飽和脂肪酸の摂取が健康に悪い」と言われるようになった起源としては、1940年までに遡ります。

ミネソタ大学の生理学者であったアンセル・キースは当時のアメリカ人における心臓病の急増は、彼らの食生活およびライフスタイルに原因があるという仮説を立てました。

 

そこでキースは15年以上の歳月をかけて、様々な国における心臓病と脂質の関連性を調査しました。

その結果、心筋梗塞や脳卒中のリスクは、血清コレステロールの総量、血圧、肥満度と直接相関していることが明らかとなり、

こういった病気の原因は飽和脂肪酸およびコレステロールの摂取によるものだとキースは主張しました。

 

キースの研究における欠陥


CrossFit

左図:キースが主張したデータ
右図:全ての国のデータを示した図

 

ただ、キースがこの研究を発表した当初から、その研究結果に対してその他の多くの専門家が疑問を抱いていました。

というのも、キースは20以上の国のデータがあったにもかかわらず、彼の仮説に沿うように国を意図的に選出し、その上で脂質の摂取と心臓病に強い関連性があることを主張していたからです。

実際全ての国のデータを考慮した場合、脂質の摂取と心臓病の相関は弱いことがわかります。

 

また、2017年にはキースの研究の欠陥を示した論文が発表されています。

この論文では主に以下の4つの欠陥が指摘されています👇

 

  1. 仮説に合うように国が選出された
  2. フランスはフレンチパラドックスを避けるために意図的に除外された。
  3. ギリシャのデータは四旬節の間に取られたため、矛盾が生じた。
  4. 砂糖や炭水化物が心臓病の原因として考慮されていない。

 

そしてキースの主張とは反対に、以下のように飽和脂肪酸の摂取と病気の関連性を否定する研究が多くあります👇

 

  • 2010年の前向き研究のメタ分析では、飽和脂肪摂取量と冠動脈性心疾患、脳卒中、心血管疾患の間に関連はないことが判明した。
  • 2015年の観察研究のメタ分析では、飽和脂肪の摂取と冠動脈性心疾患、心血管疾患、虚血性脳卒中、2型糖尿病、そして最も重要な指標である全死亡の間に関連はないことが判明した。
  • RCTと観察研究の両方に関する2014年のメタアナリシスでは、どの脂肪酸の摂取量と冠動脈リスクとの間に明確な関係はないことが判明した。
  • 飽和脂肪酸の摂取量が多いほど、心臓病、脳卒中、死亡率のリスク低減につながるという研究結果もある。

 

このように「飽和脂肪酸は健康に悪い」という説は現代に入って徐々に覆されてきており、

現代における病気の真の犯人はコレステロール以外の外部要因(例えば余剰の糖質や活性酸素)にあるのではないかと考えられています。

 

まとめ

記事の最後に「どんな脂質をどれくらい摂取すれば良いか」についてまとめます。

 

  • 脂質は細胞膜の生成といった生命現象を正常に行うために不可欠な栄養素であるため、完全に断ってはいけない。最低でもカロリー全体の20%以上を目安に摂取する。
  • 1週間当たり700g以上の脂質を豊富に含んだ魚(シャケ、サバ、ブリなど)を確保できれば、オメガ3脂肪酸の摂取量としては十分。
  • 飽和脂肪酸は必ずしも健康に悪いわけではない。むしろ健康に良い側面もある。ただし不飽和脂肪酸が健康に与える影響も大きいため、飽和脂肪酸の摂取は脂肪酸全体のうちの3分の1程度に留め、残りは不飽和脂肪酸を摂取する。

 

それではまた別の記事でお会いしましょう!