テストステロンは、人間だけでなく、他の動物にも存在するホルモンです。
男性の場合、主に睾丸でテストステロンが作られます。
女性の卵巣でも、男性の1/10〜1/20とはるかに少量ではありますが、テストステロンが作られます。
テストステロンの生産は、思春期に著しく増加し始め、30歳前後を過ぎると減少し始めます。
テストステロンは性欲と最も関連し、精子の生産に重要な役割を果たします。また、骨や筋肉の量、体内における脂肪の蓄積、さらには赤血球の生成にも影響を与えます。
そしてテストステロンのレベルは、気分にも影響を及ぼします。
目次
テストステロンの利点
テストステロンは、女性ホルモンであるエストロゲンとは対照的に、アンドロゲン群に属する男性ホルモンと考えられています。
しかし、先にも述べた通り、女性でもテストステロンは持っており、健康な体を作るためには欠かせないものです。
同化作用(小さな部品から分子を構成する代謝過程)があるため、テストステロンは筋肉を作り、脂肪を燃焼させる働きがあります。
テストステロン値が高いことのメリットは、
- 気分の改善
- 認知能力の向上
- 性欲の改善
- より良い睡眠
- より多くのエネルギー
- 生活の全体的な質の向上
など、多岐にわたります。
しかし残念なことに、現代の生活は、食生活の乱れや過度なストレスなど、私たちのテストステロン値を下げる要因をたくさん含んでいます。
ほとんどの男性は、30歳を過ぎるとテストステロンが減少し、心臓病、2型糖尿病、肥満、不妊、筋肉の減少、脂肪の増加といった、あらゆるパフォーマンスの低下のリスクにさらされるようになります。
テストステロンを自然に増加させる方法5選
体内のテストステロン値を上げるだけなら、サプリメントやステロイドなどを使用して、外から取り入れる方法があります。
ただ、この方法に依存してしまうと、身体の内部でテストステロンを生成する力が弱まってしまうため、長期的に見るとかえって健康に悪い可能性があります。
ちなみに、テストステロンと対になるのがコルチゾールというホルモンで、筋肉組織を分解する異化作用(分子を小さな構成部分に分解してエネルギーを取り出す代謝過程)があります。
体内のストレスレベルが高すぎると、生殖器系の優先順位が下がり、睾丸におけるテストステロンのエネルギーが少なくなってしまいます。
それでは、身体の内部からテストステロン値を自然に高める方法とはどのようなものがあるでしょうか?
1. 筋力トレーニング
まず一番手っ取り早く、かつ重要なことは筋肉を鍛えることです。
筋肉は私たちの最大の臓器であり、普段の健康の維持、および長寿の実現のためにはかけがえのないものです。
筋肉を増やすことの利点は、単に外見的な魅力を高めるだけではありません。筋肉は、新陳代謝を活発にし、骨密度を高め、私たちに活力を与え、成長ホルモンを急増させます。
筋力トレーニングをすることで、体に筋肉をつけるよう信号を送ることができます。
重りを持ち上げたり、動かしたりする刺激によって、筋繊維は非常に速い速度で収縮し、発火します。
その結果、身体はより強くなる必要性を認識し、テストステロン、ヒト成長ホルモン、mTORといった複数のホルモンや代謝経路によって、筋肥大が引き起こされるのです。
一般的に筋力トレーニングにおいて、少ない反復回数(2~6回)の場合は筋力および筋肉量が、比較的多い回数(6~15回)行うと、筋持久力が発達しやすいです。
また、効率よく筋肉をつけるためには、特に初心者のうちは、より多くの筋繊維を動員するため、部位別のアイソレーション運動よりも、全身の複合運動で行う方が効果的です。
具体的には、
- スクワット
- デッドリフト
- プルアップ
- オーバーヘッドプレス
- バーベルロウ
- ベンチプレス
といったエクササイズがテストステロンを高めるために非常に有効です。
2. 脂質を多く摂る
近年は、「脂肪を多く摂ると太る」というイメージが先行し過ぎているせいか、脂質の摂取を過度に避ける人も多くなっています。
しかしながら、もちろんどんなものでも食べ過ぎは良くないですが、脂質自体は日々の健康を維持する上で必要不可欠な大切な栄養素です。
そのため、極端に低脂肪の食事はホルモンバランスを悪化させるため、避けるべきです。
脂質は、健康な細胞の成長やホルモンの生成に欠かせない栄養素であり、中でも一価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸よりも有意にテストステロンを増加させます。
テストステロンを高める脂肪質の食品には、亜鉛、マグネシウム、セレンなど、筋肉増強および脂肪燃焼にも必要な微量栄養素も詰まっています。
こういった栄養素は、卵、サーモン、イワシ、ナッツ類、赤身の肉などに豊富に含まれています。
ただし、ただ油を取ればいいというわけではなく、何事も質を重視する必要があります。
具体的には、炎症を引き起こさないような健康的な脂肪源を摂取する必要があります。
キャノーラ油、ひまわり油、コーン油、サラダ油などの、いわゆる植物性の油はトランス脂肪酸を多く含み、炎症や酸化ストレスを増加させ、テストステロンを減少させることに繋がります。
3. 間欠的断食
一定期間食べ物を摂取しない、いわゆる断食も正しく行えばテストステロン値の向上に効果があると言われています。
ある研究では、短期間の断食によってテストステロンが180%も増加することが判明しています。
一方、24~36時間の断食は成長ホルモンを2000%という驚異的な数値で増加させます(ⅰ)。
適度なレベルでの断食は、引き締まった筋肉を作り、脂肪を燃やすのに効果的です。
これは、体がケトーシス状態に移行し、筋肉を維持したまま、自身の蓄積された脂肪組織を燃料として使い始めるからです。
しかしながら、50時間を過ぎると、テストステロンとHGH(ヒト成長ホルモン)が低下し始めるという研究結果があります(ⅱ)。
やはり、何事も極端は良くないようです。
4. 高強度インターバルトレーニング
高強度インターバルトレーニング(HIIT)は、無酸素運動で筋肉の成長を促すため、心肺機能を鍛えるトレーニングながらも、同時に筋力トレーニングと似たような恩恵も得ることができます。
低強度で定常的な有酸素運動(LISS)と比較すると、HIITは遊離テストステロンをより顕著に増加させます。
また、ランニングなどよりはるかに少ない時間で、心肺機能も向上させることができるため、時間効率が段違いです。
HIITは他のトレーニング同様、異化作用があり、コルチゾールを増加させます。しかし、平均的なセッション時間は短くて5分、長くても30分程度です。
これはランニングなどの慢性的なストレスとは違い、急性のストレス要因であるため、コルチゾールが分泌したとしてもすぐに減少し、その後他の同化ホルモンが放出されます。
5. ビタミン・ミネラルの確保
テストステロン値の維持および向上のためには、筋力トレーニングの項目でも述べた通り、ビタミンとミネラルの話を欠かすわけにはいきません。
テストステロンと特に関わりのあるビタミン・ミネラルには以下のようなものがあります👇
- 亜鉛:亜鉛はテストステロンの生成に最も大きく影響します。亜鉛の1日の摂取基準は約10gほどで、牡蠣、豚レバー、カニ、チーズなどの食品に多く含まれています。
- ビタミンD:ビタミンDは日光を浴びることによって体内で生成されるホルモンで、精子細胞の健全な発育をはじめ、体内のほぼすべての生理作用に不可欠です。また、テストステロンを増加させ、性欲を高める効果もあります。
- マグネシウム:マグネシウムもまた、体内の生物学的プロセスを正常に促す上で、700~800以上もの働きを担っていると言われている大切な栄養素です。筋肉を作るのに重要な、健康的な骨格と神経系を形成するのに役立っています。マグネシウムの摂取は、血清テストステロン値に直接的な影響を及ぼします(ⅲ)。
- セレン:セレンは、代謝に重要な役割を果たすミネラルの一種です。グルタチオンを刺激する作用があるため、多くの抗酸化作用があります。レバーやカニ、魚介類など、動物性食品に多く含まれています、テストステロン値の面では、テストステロンと精子の生産を増加させることがわかっています。
以上、これら5つの要素を生活の中で意識し、テストステロン値を高めて活力に溢れた楽しい人生を送りましょう♪
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