日本は世界一眠らない国と呼ばれています。
中には睡眠不足の状態であることが偉いとまで考えている人もいると思います。
この記事ではそんな睡眠がどれほど重要か、
そして脳のパフォーマンスを最大限に発揮するためにはどんな眠り方が有効なのか、解説していきます。
目次
睡眠の重要性
日本は睡眠時間が少ないことで有名です。
OECD(経済開発協力機構)が2018年に33カ国(OECD加盟30カ国および中国・インド・南アフリカ)を対象に行った調査では日本の睡眠時間は7時間22分と、ダントツでワースト1位という結果になりました。
しかも2位の韓国と約30分の大差です。
睡眠時間が短い国TOP10(男女全体)
順位 | 国名 | 睡眠時間 |
1位 | 日本 | 7時間22分 |
2位 | 韓国 | 7時間51分 |
3位 | スウェーデン | 8時間02分 |
4位 | デンマーク | 8時間08分 |
5位 | アイルランド | 8時間11分 |
6位 | ノルウェー | 8時間12分 |
7位 | オーストリア | 8時間18分 |
8位 | ドイツ | 8時間18分 |
9位 | メキシコ | 8時間18分 |
10位 | ギリシャ | 8時間20分 |
ちなみに最も睡眠時間が長い国は南アフリカで9時間13分です。
睡眠時間が長い国TOP10(男女)
順位 | 国名 | 睡眠時間 |
1位 | 南アフリカ | 9時間13分 |
2位 | 中国 | 9時間01分 |
3位 | エストニア | 8時間50分 |
4位 | インド | 8時間48分 |
5位 | アメリカ | 8時間48分 |
6位 | ニュージーランド | 8時間46分 |
7位 | カナダ | 8時間40分 |
8位 | ルクセンブルク | 8時間38分 |
9位 | スペイン | 8時間35分 |
10位 | トルコ | 8時間34分 |
また、2018年に厚生労働省により20歳以上の年代別の睡眠時間の割合の調査が行われています。
○1日の平均睡眠時間(男女、20歳以上)
問い:ここ1ヶ月間、あなたの1日の平均睡眠時間はどのくらいでしたか。
![]()
この結果を見ると睡眠時間が6時間未満と回答している割合が男女ともに4割近くにのぼっていることが分かります。
個人差もあるため、「睡眠時間は長ければ長いほどいい」というものでも決してありませんが、いくらなんでも睡眠時間が6時間未満というのは流石に短すぎと言えるでしょう。
睡眠と脳の不思議
脳の疲れを取ることができるのは睡眠だけ
睡眠と脳には深い関わりがあります。
私たちの脳は日々活動を行うための舵取りの役目を持ち、脳が上手く機能しないといいアイディアが思い浮かばなかったり、凡ミスが増えたりしてしまいます。
そして、「脳の疲れを取れるのは睡眠だけ」と言われています。
日々の仕事における集中力や分析力、発想力といった能力はニューロン(神経細胞)のつながりによってできる脳内ネットワークが正常に働くことによって発揮されます。
ただこの脳内ネットワークの働きは脳が疲れると正常に機能しなくどころか、能力が著しく低下してしまいます。
それを防ぐためにも睡眠は不可欠であり、さらにこの脳内ネットワークを回復させるだけなら、ごく短時間の睡眠だけでも効果があることがわかっています。
疲労回復のゴールデンタイム
睡眠には疲労回復効果があり、中でも眠りはじめの90分〜180分の間は成長ホルモンが大量に分泌されるので、まさに「脳の疲労回復のゴールデンタイム」です。

上記の画像は最近の僕の睡眠情報のデータです。
赤い点で示したように深く眠っているときを「ノンレム睡眠」、
青い点で示したように浅く眠っているときを「レム睡眠」と言います。
そして私たちはこのグラフのようにノンレム睡眠とレム睡眠を行ったり来たりしながら眠っています。
また、このノンレム睡眠とレム睡眠はセットで約90分なので、90分周期で深い眠りと浅い眠りのサイクルがやってくる、ということです。
そして1回目と2回目のノンレム睡眠時に成長ホルモンが大量に分泌されるので、どんなに忙しくても眠りはじめの3時間(180分)は寝た方がいいでしょう。
成長ホルモンは新陳代謝やタンパク質の合成に関わっているため、脳の疲労回復や身体の修復にとって必要不可欠なのです。
睡眠負債
「睡眠負債」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これはアメリカのスタンフォード大学の研究者が提唱した概念で、「負債」という単語からも連想される通り、「日々の睡眠不足が借金のように積み重なり、心身の不調を引き起こす状態」のことを指します。
アメリカで睡眠負債に関してPVT(psychomotor vigilance task)と呼ばれる、画面上でライトが点滅してからボタンを押すまでの反応速度を見る実験が行われました。
健康なボランティアを集めて以下の4つのグループに分けて数日間観察するという研究でした。
- 8時間寝るグループ
- 6時間寝るグループ
- 4時間寝るグループ
- 徹夜するグループ
この実験で判明した驚くべき事実は、「1日徹夜した人と6時間睡眠を10日間続けた人の反応速度がほぼ同じ」だったということです。
そしてさらに恐ろしいことに、「6時間睡眠を続けた人には睡眠不足だという自覚がなかった」そうです。
つまり、徹夜したときと同じくらい脳のパフォーマンスが低下しているのにもかかわらず、その自覚症状がなかったのです。
この自覚症状のなさが睡眠負債の最も恐ろしい点と言えるでしょう。
日本人の中では「6時間も寝られたら充分」と考えている人が少なくないと思いますが、この事実を知ったらきっと驚くと思います。
睡眠負債を測定する方法
睡眠は個人差による影響がとても大きいです。
先ほど紹介した研究では6時間の睡眠では脳のパフォーマンスが落ちてしまうことが分かりましたが、6時間未満の睡眠でも日中全く眠気を感じずバリバリ仕事が出来る人もいるかもしれません。
そこで自分がこの睡眠負債を抱えているかどうか判断する方法を紹介します。
その方法とは、「休日に飽きるまで思いっきり寝る」というやり方です。
以下が睡眠負債を測定するステップです。
- 思いっきり眠り、もし朝目が覚めたとしても、少しでも眠気が残っていたらそのまま眠り続ける
- 「もう完全に眠気が無くなった」と感じたら、そこではじめてベットから起き上がる
- 就寝から起床までの時間を測る
(1)そのときの睡眠時間が普段と変わらないか、多少伸びた程度の場合
→この場合は心配しなくて大丈夫です。睡眠負債は抱えていないと言えます。
(2)そのときの睡眠時間が普段の睡眠時間より2時間以上伸びた場合
→注意が必要です。睡眠負債が溜まっている可能性大です。
睡眠はリズムが大事なので元々脳に備わる体内時計が「眠くなる時間」「何時間寝るか」を決めています。
そのため睡眠時間が2時間以上増減するということは、相当睡眠リズムが崩れていると言えるので、普段の睡眠の量が足りていないと考えられます。

睡眠障害の3タイプ
不眠症や睡眠障害の症状は大きく以下の3つに分類されます。
- 入眠障害タイプ
- 熟眠障害タイプ
- 早期覚醒タイプ
それでは、もしこの3つのうちのどれかに自分が当てはまる場合、どのような対処法を取ればいいか見ていきましょう。
1. 入眠障害タイプ
このタイプは「ベットに入ってからなかなか入眠することができない」というタイプです。
いわゆる「寝つきが悪い」という悩みを持っています。
ベッドに入ってから1時間以上経っても眠れない日が続く場合は、入眠障害を持っている可能性があります。
このタイプには「寝る90分程前にお風呂に入る」という方法をオススメします。
人間の体温には「腋窩温」と呼ばれる、よく脇で測るような表面温度と、直腸の温度を示す「深部体温」の2種類があります。
そしてこの「深部体温」が下がると同時に、眠くなっていきます。
寝る前にお風呂に入ることで深部体温を一時的に上昇させ、その後の湯冷めによって深部体温の低下を効果的に引き起こすことができます。
実際、元々僕は毎日シャワーで済ませるタイプだったのですが、毎日お風呂に入るようになってからは寝つきがめちゃくちゃ良くなりました。
以下の画像は僕のめちゃくちゃ寝つきが良かった日の睡眠データです。

「入眠潜時」の箇所を見ていただくと分かる通り、なんとベッドに入ってからわずか5分8秒で眠りについています(笑)
ここまで早く眠れるのはなかなか稀ですが、それでもほとんど毎日30分以内に眠りにつけています。
2. 熟眠障害タイプ
このタイプは「睡眠時間はしっかり取れてるんだけど、夜中何度も目覚めちゃったり、睡眠が浅い」というタイプです。
睡眠の質が浅くなる理由として「ストレス」「体の不調」「頻尿」など様々な原因が考えられますが、こういった問題が抱えていない場合は「体内時計の乱れ」が原因かもしれません。
人間の脳や体は体内時計に沿った行動を好みます。
そして体内時計には「脳の体内時計」と「身体の体内時計」の2種類があります。
そのためこの2種類の体内時計のバランスが取れていないと、「脳は疲れて寝たいんだけど、身体は別に眠りたくない」といったことが起きてしまい、睡眠の質が低下してしまいます。
この「体内時計のアンバランス」を修正する鍵は「朝日を浴びること」と「朝食を摂ること」です。
朝目が覚めて、睡眠の質が悪くてまだ眠かったとしても、その時だけ頑張ってベッドから出ちゃいましょう。
そして太陽の光を存分に浴びて、栄養バランスの取れた朝食を摂ります。
こうすることで脳と身体の2種類の体内時計が同期され、睡眠の質が向上していくはずです。
3. 早期覚醒タイプ
このタイプは「起床予定の時間より2~3時間早く目覚めてしまい、その後もなかなか眠れない」というタイプです。
このタイプの人は「完璧主義」や「真面目な性格」、他にも「鬱傾向にある人」がなりやすいと言われています。
自分が新卒で入った会社を休職して鬱になったとき、確かに予定の時間よりだいぶ早く起きてしまい、その後全然眠れず辛い思いをしました(笑)
このタイプに最もオススメの対策は「寝る時間を早くする」です。
もし今まで深夜0時以降に寝ていた場合は、夜の22~23時あたりにベッドに入るようにしてみてください。
早期覚醒タイプの人は「質の良い睡眠を取らねば」であったり、「明日の仕事は頑張らねば」と自分を追い詰めてしまう傾向があります。
そこで、睡眠時間を早めにして、結果多くの睡眠時間をとることで、早く目覚めたとしても「けっこう寝た」という感覚を取り戻すことができます。
こうして、「早く目が覚めてもトータルの睡眠時間は十分足りているから問題なし」という考え方になれれば次第に睡眠に対するプレッシャーも和らいでくるはずです。
昼寝・居眠りの効果
夜の睡眠の問題を解決できたら、今度は「昼寝」に関してです。
昼寝や居眠りの効果は凄まじく、「午後2~4時の短時間の居眠りは本格的な睡眠の1時間半~2時間に相当する」とも言われています。
人間の体内時計は午前の2~4時頃、丑三つ時に眠気のピークを迎えます。そして体内時計はおそらくこの午後2~4時の時間帯を起きてから寝るまでの中間地点と捉えており、その結果眠くなってしまうのでしょう。
昼寝・居眠りのメリットは次のようなものがあります。
- 記憶の定着率が向上する
- ひらめきや発想力が育まれる
- 脳の疲れを回復させ、集中力が向上する
- ストレスを軽減する
昼寝の効果の測定に関しては、2005年に行われた福岡県の明善高校の実験が有名です。
この高校では1日15分の昼寝タイム設け、夏の間に約1カ月半試みました。
その結果、昼休み休憩の時間に昼寝をした生徒は、勉強にやる気が出て、成績も向上したと答えた人が多かったそうです。
先ほども述べた通り、脳の疲れは眠りでしか取り除くことができません。
そのため、午後の眠い時間帯にコーヒーを飲んでカフェインをとったり、ガムを噛んだりするよりも、15〜30分程度の仮眠を取ったほうがよっぽど効率的に疲労を回復させることができます。
その際の注意点として、「30分以上寝ない」ことが重要です。
30分以上かけて昼寝をしてしまうと、本格的な睡眠に入ってしまい、逆に夜寝られなくなってしまいます。
昼寝をする習慣がない人はぜひ試してみてください!
きっと今までとの脳の覚醒度の違いにビックリすると思います♪

おわりに
いかがだったでしょうか。
この記事では主に「睡眠の重要性」「睡眠障害の解消法」「昼寝や居眠りの効用」について見てきました。
大切なのはこれらの情報を参考にしながら、「自分なりのベストな睡眠法を見極めて実践すること」だと思います。
自分の「性格」「気質」「ストレス耐性度」「労働時間」「体内時計のリズム」「年齢」「性別」といった要因によっても最適な「入眠時間」「睡眠時間」「昼寝のタイミング」は変わってきます。
自分に合った睡眠法を探し出し、可能な限り日々の生活において取り入れていくことで、普段の仕事や活動のパフォーマンスを向上させていくことが出来ると思います!
この記事が少しでも参考になれば幸いです♪
それではまた〜。