こんにちは!
健康オタクのセンです。
この記事では「筋トレの効果を最大化する上で、炭水化物はどれくらい摂取する必要があるのか?」「あるいはそもそも必要なのか?」ということをテーマに解説していきたいと思います。
主なトピックは以下の通りです👇
- 炭水化物の最小単位である「グルコース」と「グリコーゲン」について
- 筋トレ時のパフォーマンスにおける炭水化物の摂取が与える影響
- 筋肥大における炭水化物の摂取が与える影響
それでは順番に見ていきましょう。
グルコースとグリコーゲンの違い
炭水化物が筋トレに与える効果を見ていく前に、炭水化物がどのように消化・吸収され私たちの体のエネルギー源になるのか見ていきましょう。
炭水化物を摂取すると早速口の中で分解が始まります。具体的には、「唾液アミラーゼ」と呼ばれる消化酵素により、「グルコース」、「マルトース」、および「デキストリン」に分解されます。
その後胃を通り抜けた後に、小腸に到達し、そこで炭水化物の最小単位であるグルコースに分解され、小腸から吸収されていきます。
私たちの体内には今後に備えるため、グリコーゲン(グリコーゲン合成:グルコースが連なった状態)という形でグルコースを貯蔵する場所が存在します。
このグリコーゲンの貯蔵庫があるおかげで、激しい運動の際でも食事からの炭水化物の摂取にのみ頼るのではなく、体内からエネルギーを引き出すことができます。
このグリコーゲンは肝臓に80~120g、筋肉に350~500g貯蔵されています。(論文)
これらの貯蔵されているグリコーゲンはエネルギーが必要になると、ホスホリラーゼという酵素により随時分解が始まり(グリコーゲン分解)、グルコースとなることでエネルギーとして使える状態に変化します。
以下の図は運動時における各エネルギーの消費量を表したものです(研究)👇

この図を見てみると、グリコーゲンおよびグルコースの消費量は運動強度が上がるにつれて増えていき、運動時のメインのエネルギー源は血中のグルコースではなく、筋肉に貯蔵されているグリコーゲンだと分かります。
筋力トレーニングにおける短期的な炭水化物摂取の効果
グリコーゲンが運動時のメインのエネルギー源であることが分かったところで、一般的な筋力トレーニングにおいて、どれほどのグリコーゲンが使われるのか見ていきましょう。
例えば1990年に行われた研究によると、ボディビルダーを対象として、「フロントスクワット」、「バックスクワット」「レッグプレス」「レッグエクステンション」をそれぞれ5セットを〜12RM(Repetition Maximum:最大反復回数)で限界まで実施させたところ、
大腿四頭筋におけるグリコーゲンの消費量は全体のわずか28%であったことが分かっています。
つまり、一般的な筋力トレーニングで体内のグリコーゲンが足りなくなることはまず考えられないということです。
よって先ほども述べた通り、私たちは運動時に血中のグルコースではなく貯蔵されているグリコーゲンをメインのエネルギー源として使うため、筋トレ直前といった短期的な炭水化物の摂取は筋トレのパフォーマンスに影響は与えないということです。
筋力トレーニングにおける長期的な炭水化物摂取の効果
ここまで短期的な炭水化物摂取の筋力パフォーマンスにおける影響について見てきましたが、長期的に見た場合どのような影響を与えるのでしょうか?
糖質制限やケトジェニックダイエットといった、極端に炭水化物の摂取量を抑える食事法は、筋トレにおけるパフォーマンスにおいてマイナスに働くのでしょうか?
2022年に行われたシステマティック・レビューによると、多くの研究が筋力トレーニング時のパフォーマンスにおける炭水化物の摂取の効果は発見されなかったとしています。
このレビューでは、短期的な炭水化物の摂取効果を調べた8つの研究、そして長期的な炭水化物の摂取効果を調べた17の研究のうち16の研究で、炭水化物の摂取は筋トレ時のパフォーマンスに影響を与えないと結論づけています。
また、17の研究のうちの残りの1つの研究は、高炭水化物グループに比べ、比較対象群であったケトジェニックダイエットグループの方が全体の摂取エネルギーが少なく設定されていました。
よって、これらの研究から糖質制限やケトジェニックダイエットといった、炭水化物を極端に制限した食事法だとしても、筋トレのパフォーマンスは落ちないということが分かります。
しかし、先ほども述べた通り、運動時にはグリコーゲン、およびグルコースの消費が激しくなります。
食事から炭水化物を摂取しなければ、体内のグリコーゲンは枯渇し、結果的に筋力トレーニングを行うためのエネルギーが足りなくなってしまわないのでしょうか?
結論としては、食事から炭水化物の摂取を断ったとしても、グリコーゲンが永久に無くなるようなことはありません。なぜなら、私たちは体内でグルコースを作り出すことができるからです。
よく必須脂肪酸とか必須アミノ酸のように、「必須○○」と呼ばれる栄養素を聞いたことがあると思います。
そしてここでの「必須」とは、「人体にとって必須の栄養素」という意味ではなく、「体内で合成することができず、外部(食事)から摂取することが必須である」という意味の必須です。
でも、考えてみれば必須脂肪酸とか必須アミノ酸は聞いたことがあっても、「必須グルコース」なんて言葉は聞いたことがありませんよね。
その理由はもう皆さんもお分かりのとおり、「グルコースは体内で合成できるから」ということです。
そしてこの糖新性のメカニズムは以下の3つに分類されます👇
- タンパク質:リジンとロイシン以外のアミノ酸は糖源性アミノ酸といい、アミノ酸からグルコースへと変換することができる
- 脂質:中性脂肪が脂肪酸とグリセロールに分解され、分解されたグリセロールはグルコースに変換することができる
- 乳酸:筋トレなどの無酸素運動時において、コリ回路と呼ばれる経路により、肝臓にて乳酸からグルコースに戻すことができる
結論として、これまで行われてきた研究、そして体内におけるグルコースの生成経路の仕組みなどから判断して、
炭水化物の摂取を断ったとしても、筋トレ時に消費されたグリコーゲンは、消費された分を取り返すかのように体内で合成されるため、長期的に炭水化物を断っても筋力パフォーマンスには影響を与えないということです。
筋肥大における炭水化物摂取の効果
ここまでで筋トレ時の「パフォーマンス」における炭水化物の摂取の影響は特にないということが分かりましたが、筋肉そのものの成長、つまり「筋肥大」において炭水化物の摂取は必要なのかどうか見ていきます。
「筋肉をつけるためには炭水化物が必須!」とよく言われる理由の1つとして、インスリンの分泌が挙げられます。
確かにインスリンはアナボリックホルモンとも呼ばれ、筋タンパク質合成を促したり、筋タンパク質分解を抑制する働きがあります。(研究)
しかし、インスリンの分泌を促すのは炭水化物だけではありません。あまり知られていないことかもしれませんが、筋肉の材料となるタンパク質の摂取によってもインスリンはしっかりと分泌されます。
質の高いタンパク質を含んだ食材はインスリン分泌指数が高く、~20g程度のタンパク質の摂取で炭水化物の摂取と同様のインスリンの分泌効果、および筋タンパク質の分解の抑制作用があることが分かっています。(研究)
炭水化物の摂取はタンパク質をほとんど摂取しなかった場合、筋タンパク質の分解の抑制にわずかながら貢献するかもしれませんが、十分な量のタンパク質を摂取していた場合、筋タンパク質の合成および分解において更なるメリットはありません。
〜タンパク質の最適な摂取量についてはこちら👇〜
また、2021年に行われた研究では、筋力トレーニングを実施している男性を対象に、高脂質と高炭水化物のグループに分けてその後の結果を観察したところ、12週間後のお互いのグループの体組成に目立った差はありませんでした。
つまり、炭水化物を多めに摂ったとしても、そうでなかったとしても、カロリーとタンパク質の摂取量、およびトレーニング内容が同じであれば、体型において変化は生じないということです。
まとめ
それではこの記事のまとめです👇
- 特に高強度の運動時は体はグリコーゲンをメインのエネルギー源として使う
- 炭水化物を摂らなくても体は別の栄養素からグリコーゲンを合成する
- 短期的および長期的な炭水化物の摂取は筋力トレーニングにおけるパフォーマンスとは関係ない
- 炭水化物を摂取しているかどうかは筋肥大(筋肉の発達)とは関係ない
よってこの記事の結論としては、「筋トレの効果を高めるために炭水化物を摂取するかどうかは、どっちでもいい」ということになります。
そのため変に炭水化物の摂取量を意識する必要はなく、十分なカロリーとタンパク質を摂取してさえいれば、残りの炭水化物の摂取量は自由に設定してしまって問題ありません。
それではまた別の記事でお会いしましょう!
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