筋肥大を目指すための最適な食事法を科学する

食事

 

筋トレをして筋肉を付けよう!」と思っても、

 

  • 筋肉をつけるには栄養が大事と言うけど、何を食べればいいの?
  • どれくらい食べればいいの?
  • いつ食べればいいの?
  • 筋トレしてるのになかなか筋肉がつかない…
  • 筋肉はつけたいけど脂肪は増やしたくない!

 

のような悩みや疑問を持つことがあると思います。

 

この記事ではこういった疑問に対して、科学的なエビデンスもいくつか紹介しながら、筋肉をつけたい人向けに普段の食生活の指針となるものを伝えていきます。

 

筋肥大とエネルギーバランス

flat lay photography of raw salmon fish

 

まずは普段の食事のカロリーについてです。

 

筋肥大においてエネルギーバランスは非常に重要です。

エネルギーバランスとは「消費カロリー摂取カロリーバランス」のことです。

 

短期間にエネルギーが不足した状態になるだけで、細胞同士の分子間のやり取りおよびシグナリングに変化が起き、

同化反応(エネルギーを用いて単純な物質から複雑な物質を合成する)が抑制されるとともに、異化反応(複雑な物質を分解してエネルギーを得る)が促進してしまいます。

 

また、エネルギー不足の状態で筋力トレーニングを行ったとしても、その結果生じる筋肉のタンパク質合成量は、エネルギーバランスが取れた状態で何もせず休んでいる時のタンパク質合成量レベルまでしか届かないと言われています。(論文はこちら

これらのことは考えてみれば当然で、外部からのエネルギーが不足した状態だと、生命活動を維持するために内部でエネルギーを作り出す必要があるので、筋肉や脂肪の分解が進むのは想像しやすいですよね。

 

それではエネルギー不足の状態ではなく、エネルギーバランスが均衡している場合はどうでしょう?

結論から言うと、ユーカロリック状態(摂取カロリー=消費カロリー)も、筋肥大を目指す上では最適ではありません。

なぜなら身体器官における異化反応が行われると同時に、骨格筋より分泌されたアミノ酸が主要組織の形成に使われるなどの理由があるからです。

 

よって、やはり筋肥大を目指すのなら摂取カロリーが消費カロリーを上回るのは必須です。

筋力トレーニングをしなかったとしても、摂取カロリーが消費カロリーより高ければ体は大きくなりやすいです。

そのため筋肥大においては筋トレももちろん大切だが、食事管理の方がより大切という認識を持つべきでしょう。

 

筋トレ初心者と筋トレ経験者における最適な食生活の違い

ここからはさらに深掘りして、

 

  • 筋トレ初心者:筋トレ習慣がなく、筋肉も少ししか付いていない状態
  • 筋トレ経験者:一定期間の筋トレ習慣があり、筋肉もある程度以上付いている状態

 

と定義して、それぞれにおけるエネルギー摂取の違いを見ていきます。

 

日常で筋トレをしていない人たち(筋トレ初心者)を対象にした研究によると、摂取カロリーが消費カロリーよりも2,000kcalほど多い食生活を送ったグループは、8週間で3kg体重が増加したのに対し、

摂取カロリー=消費カロリーの食生活を送ったグループは、体重は劇的に増加しませんでした。

しかも前者のグループの太った分の3kgは脂肪よりも筋肉量の増加による影響が大きかったのです。

 

では、普段から筋トレをしていて、すでにある程度の筋肉量を持っている人(筋トレ経験者)であればどうでしょう?

面白いことに結果が変わってきます。筋トレを習慣化している人たちを、先ほどと同じように、摂取カロリー>消費カロリーのグループと、摂取カロリー=消費カロリーのグループに分けて8~12週間様子を見ました。

その結果は両者とも体重は増えたものの、摂取カロリー>消費カロリーグループ1.7kg摂取カロリー=消費カロリーグループ1.2kgとそれほど大した違いは見られませんでした。

 

そしてさらに面白いことに、この増えた体重分のうち、脂肪の増加量が摂取カロリー>消費カロリーグループ1.1kg摂取カロリー=消費カロリーグループ0.2kgと、

筋トレ経験者においてはカロリーを過剰に摂ったグループの方が脂肪が溜まりやすかったのです。

 

なので、これらの研究結果から得られる結論としては、

 

  • もしあなたが筋肉量が少なく筋トレ習慣がないのであれば1,000~2,000kcalほどの余剰カロリーを取りながら筋トレすることで脂肪の増加を抑えながら効率よく筋肥大を目指せるのに対し、
  • もしある程度の筋トレ経験者であれば、摂取カロリーが消費カロリーを少し超えるくらい(0~500kcalほど)を意識しながら筋トレするのがベター

 

とまとめられるでしょう。

 

もちろんこの結果はカロリーのみを指標にしていて、栄養素のバランスが考慮されていませんが、1つの有益な指標になるはずです。

 

筋肥大と三大栄養素

エネルギーバランス()について見てきた後は、そのエネルギーの内容()、つまり栄養素について見ていきましょう。

この記事では我々人間の体のエネルギーとなる三大栄養素であるタンパク質炭水化物脂質の摂取について、筋肥大の観点から考察していきます。

 

タンパク質

cooked dish

 

タンパク質はアミノ酸によって構成されています。そしてそのアミノ酸は自然界において300種類以上存在することがわかっています。

 

そのうち人体を構成するアミノ酸は20種類のみであり、その20種類のうち、必須アミノ酸非必須アミノ酸に分類されます。

非必須アミノ酸は体内で生成が可能であるのに対し、必須アミノ酸は体内において生成することができず、食事から摂取することが必須であるため、必須アミノ酸と言われています。

 

 

タンパク質を構成する20種類のアミノ酸

 

必須アミノ酸 非必須アミノ酸
ロイシン アスパラギン酸
バリン アスパラギン
フェニルアラニン グルタミン酸
トリプトファン グルタミン
イソロイシン システイン
ヒスチジン アルギニン
リジン セリン
スレオニン アラニン
メチオニン プロリン
グリシン
チロシン

 

 

必須アミノ酸の中でも、バリンロイシンイソロイシンは枝分かれするような分子構造をしているため、BCAA(Branched-chain amino acid)と呼ばれており、

中でもロイシンmTOR(細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼの一種)の活性化など、筋タンパク質の生成において重要な役割をになっていると考えられています。

 

しかしながら、人体の細胞がしっかりと機能し成長するためには20種類のアミノ酸全てが必要なため、筋肥大のためには「ロイシンなどのBCAAだけを摂取すればいい」という訳ではなく、20種類全てをバランスよく摂取することが大切です。

 

必須アミノ酸を全て十分量含んでいる食材(卵、豚肉、牛乳)などは完全タンパク質と呼ばれ、それに対し必須アミノ酸量が低い、あるいは欠けている食材は不完全タンパク質と呼ばれます。

植物ベースの食材は不完全タンパク質であることが多いです。そのため菜食中心の食生活を送っている場合タンパク質不足に注意が必要です。

 

筋肥大のためのタンパク質摂取量

研究によると、普段の健康を維持する上ではタンパク質は体重1kgあたり0.8g~1.0gを摂取することが望ましいとされています。

ただし、筋肥大を目的とする場合はこの量では足りない可能性があります。

 

研究によると、筋トレ初心者が筋肉量を増やすために必要最低限なタンパク質な量は1.6~1.7kgであることが分かっています。(論文はこちら

さらに別の研究によると、タンパク質の摂取と筋肥大の関係において効果が最大化するタンパク質の摂取量は約2.2g/kgであることが分かりました。

そのため、「筋肥大を目指すのならば最低でも1日1.6g/kg、可能であれば2.2g/kgのタンパク質の摂取」を目標にすると良いでしょう。

ただし、全てにおいて言えることだが、最適なタンパク質の摂取量は個人のエネルギーバランスや体内素性、遺伝要因によっても変わってくるため、自分自身の生物学的個性を考慮することが求められます。

 

さらに、タンパク質の摂取は必要量を1食や2食で集中して摂るよりも、3食や4食など分散して摂取した方が筋タンパク質の合成がより促進されることが分かっています。

 

またこの辺の「いつ食べるか問題」は以下の記事でもまとめています👇

【時間栄養学】エビデンスを基に最適な食事のリズムを追究してみた

 

炭水化物

sliced banana and brown nuts on brown wooden table

 

炭水化物を多く食べると脂肪が増えたり太ったりするというイメージがあるためか、筋肥大においては必要ないものと考える人もいるかもしれないですが、実際は非常に重要な栄養素であると考えられます。。

糖質は体内に入るとグルコースまで消化分解が行われますが、そのグルコースが連結された状態のものをグリコーゲンと言います。

 

糖質は体内においては血液中の血糖、もしくは肝臓骨格筋グリコーゲンの形で貯蔵されています。

骨格筋に含まれているグリコーゲン筋グリコーゲンと呼び、この筋グリコーゲンが筋肉の収縮のためのエネルギー源となり、筋肥大においても重要な役目を担っている。

 

また、糖質の摂取はホルモン分泌にも関わっていることがわかっています。

男性ホルモンと呼ばれ筋肉を増やす作用があるテストステロンについての分析で、

低炭水化物グループと高炭水化物グループに分けられた健康な男性を対象に行われた研究において、高炭水化物グループの方がその濃度が高かったことが分かっています。(論文はこちら

 

また、糖質はタンパク質と同時に摂取することでタンパク質摂取の効果が高まると考えられています。

なぜなら糖質摂取によって体内で分泌されるインスリンは先ほど紹介したロイシン同様、mTORを活性化して筋タンパク質の合成を促進すると同時に、骨格筋における主要なタンパク質の分解系であるオートファジーの働きを抑制するからです。

 

そのため筋肥大を目的とするならば、糖質制限ケトジェニックダイエット(糖質50g以下)などの食事法は理想的ではないと考えられます。

そして糖質の摂取量としては、1日あたり最低でも3g/kg以上を目安にすると良いでしょう。

 

脂質

grilled fish, cooked vegetables, and fork on plate

 

脂肪もタンパク質と比べると筋肉の関係性がイメージしづらいためか、筋肉作りにおいてあまり注目されない存在かもしれません。

しかしながら体内における細胞膜各種ホルモン胆汁酸などの原料となったり、脳の約60%は脂質であったりと、私たちの健康を維持する上で脂質は非常に重要な存在です。

 

筋肥大においても脂質は関連があると考えられていて、先ほども言った通り脂質はホルモンの材料となるため、低脂肪食よりも高脂肪食の方が当然男性ホルモンであるテストステロン濃度は高まります。

 

ただ、脂質であれば何でも良いというわけではなく、健康および筋肥大に繋がる脂肪の種類があると考えられています。

例えば、ある研究によると飽和脂肪酸の摂取よりも不飽和脂肪酸を摂取した方が除脂肪組織(人体組織から脂肪量を引いた組織)が3倍も増加したことがわかっています。(論文はこちら

 

また、その不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸多価不飽和脂肪酸に分類され、さらにその多価不飽和脂肪酸オメガ3脂肪酸オメガ6脂肪酸に分けられます。

そしてそのオメガ3脂肪酸の摂取が他の脂肪酸と比べて筋タンパク質の合成量が高くなることが動物および人間を対象に行われた研究によって判明しています。

 

その理由としてはオメガ3脂肪酸は「細胞膜の柔軟性を保つ働き」があるため、細胞間の分子のやり取りがスムーズになり筋タンパク質の合成が促進されることと、筋タンパク質の分解系であるユビキチンープロテアソーム系の働きを抑制するからです。

 

推奨される脂肪の摂取量としては具体的な数字で一概にまとめるのは困難だが、ホルモンの正常な働きを維持するためには1日あたり1g/kgほどは最低でも摂取するべきで、

同時にオメガ3脂肪酸を男女問わず1日あたり1.1g(体重によらず)ほど摂取することが望ましいと考えられています。

また基本的には自分にとって必要な1日のカロリー量を計算し、そこから必要なタンパク質と糖質の量を引いた分を脂質のカロリーとして計算するのが良いでしょう。

 

この記事のまとめ

woman wearing black sleeveless top using gym equipment

 

最後にこの記事の要点をまとめてみましょう!

今よりも筋肉を付けたい!」という人はぜひ参考にしてみてください♪

 

  1. 筋肥大のためには摂取カロリー>消費カロリーであることが大前提
  2. 筋肥大を目指すなら少なくともタンパク質を1.6g/kg、できれば2.2g/kg摂れれば望ましい→植物性タンパク質よりも動物性タンパク質の方がEAAバランスが良いため、動物性タンパク質もしっかり摂る

    →1日においてなるべくタンパク質摂取を分散させた方が効果的

  3. 糖質は少なくとも3g/kgは摂りたいところ筋グリコーゲン量をきちんと確保するため
  4. 脂質の摂取は少なくとも1g/kg以上、そしてオメガ3脂肪酸を意識的に摂る