こんにちは!
健康オタクのセンです。
今回は「脂肪を落としながら筋肉をつけることは可能なのか?」について見ていきます。
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結論から言うと、脂肪を落としながら筋肉をつけることは可能です。
ただ、インターネットで検索してみると、脂肪を落としながら筋肉をつけることは不可能、出来たとしても非常に難しい、といった意見も見かけるので、「本当に可能なのか?」と疑問に思う人も多いと思います。
なのでこの記事ではその疑問を解消していきたいと思います。
それでは見ていきましょう。
目次
カロリーとは何か
普段私たちはよく「あの食べ物はカロリーが高い」とか、「ダイエットのために低カロリーの食材を食べる」というふうに、よく「カロリー」という単語を使います。
この「カロリー」とはそもそも何なのかというと、エネルギーの測定単位の1つです。(距離を「メートル」で表すのと同じ感じですね)
そして、「1カロリーは、1気圧の環境下において、1グラムの水の温度を1度上げるのに必要なおおよそのエネルギー量と等しい」と定義されています。
また、私たちがレストランで食事をしたり、食材を買ったときに見かけるのは「カロリー」ではなく「キロカロリー(kcal)」という表示ですね。(1キロカロリー = 1,000カロリー)
エネルギーバランスの変化 ≠ 体重の変化
栄養やダイエットの記事を読んでいると、以下のような文章をよく見かけますよね👇
- 摂取カロリー>消費カロリーのとき、体重が増える
- 摂取カロリー<消費カロリーのとき、体重が減る
栄養の教科書とかにも書いてあったりするので、「当たり前じゃん」と思うかもしれませんが、実はこれめちゃくちゃ間違ってるんですよ。

エネルギーバランスが体に入ってくるエネルギー(摂取カロリー)と、体から出ていくエネルギー(消費カロリー)によって変化するのは当然のことですよね。
ただし、「エネルギーバランスの変化」というのは、あくまで「エネルギー」のバランスがどれくらい変化しているかを表しているだけであって、体重がどれくらい変化しているかを示しているわけではないはずです。
実際、よくよく考えてみればエネルギーのバランスが取れている状態(「摂取カロリー=消費カロリー」のとき)でも体重が変化するケースは沢山考えられます。
例えばケトジェニックダイエットを開始したばかりの時期は、メンテナンスカロリーを維持していたとしても、糖質制限による体内の水分の減少により、体重が急激に減る現象が起きます。
あとはシンプルに一度に大量の水を飲んだりだとか、ずっと溜まっていた便を一気に出した場合なども、カロリーの摂取や消費とは関係なく体重が増減してますよね。
体組成の仕組み
「エネルギーバランスの変化」=「体重の変化」という式は成り立たない、ということを前提として、「脂肪を落としながら筋肉をつける」ことに関して不可能派の理論を見ていきしょう。
不可能派の理論
不可能派の理論は以下の通りです👇
- 筋肉をつけるためにはエネルギーを取り込む必要がある
- 脂肪を落とすためにはエネルギーをはきだす必要がある
- よって、エネルギーの貯蔵/放出は同時にできないため、「脂肪を落としながら筋肉をつける」ことは不可能
こうして見ると、理論としては筋が通っているように見えます。
たしかに、①筋肉をつけるためにはエネルギーが必要です。また、②脂肪を落とすためにはエネルギーを放出してあげる必要があります。
しかし、だからと言って、③のように結論づけるのは早計です。
なぜなら、筋肉と脂肪はどちらもエネルギーの集合体ではありますが、両者は連動して増減しているわけではありません。
筋肉と脂肪はそれぞれ別の組織であり、「それぞれが独立してエネルギーを貯蔵/放出」しています。
そのため、脂肪を落としながら筋肉をつけることも出来ますし、その逆に筋肉が落ちると共に脂肪がつくことも当然あります。
筋肉の構成要素
ここでは、「筋肉ってそもそも何で出来てるの?」ということについて見ていきます。
以下は、1982年に行われた筋肉の組成を調べた際の研究結果です👇
筋肉の構成要素
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この調査結果から、筋肉の構成要素は以下の3つに分類できることがわかります👇
- 水
- タンパク質
- エネルギー(グリコーゲン、中性脂肪、筋タンパク質合成)
水とタンパク質は日々の食事から摂るとして、エネルギーはもちろん食事から摂ることが出来ますが、何より体内には筋肉の他に「体脂肪」という膨大なエネルギーが眠っています。
つまり「体脂肪の減少によって放出されたエネルギーを、筋肉を増やすためのエネルギーとして使うことができる」ということです。
研究事例
ここまで、理論的には「脂肪を減らしながら筋肉をつける」ことが可能だと解説してきましたが、実際に単なる理論ではなく、現実での成功事例があるのか見ていきましょう。
ここでは食事制限や筋力トレーニングなどの介入によって、脂肪を減らしながら筋肉をつけることに成功した研究事例を3つ紹介します👇
- 体脂肪率26%と肥満気味の警察官を対象にした研究にて、食事療法とウェイトトレーニングの組み合わせにより、12週間で9.3ポンドの脂肪が減り、8.8ポンドの除脂肪体重が増加した[1]
- 26人のトレーニング経験者を、ケトジェニックダイエット(糖質5%、脂質75%、タンパク質20%)を)実践するグループと対象群(糖質55%、脂質25%、タンパク質20%)に分けたところ、ケトジェニックダイエットグループにおいては4.3kgの除脂肪体重の増加、および2.2kgの脂肪の減少が見られた。(対象群は2.2kgの除脂肪体重の増加、および1.5kgの脂肪の減少)[2]
- 筋力トレーニングを始めたばかりの女性において、有酸素運動とレジスタンストレーニングを組み合わせたプログラムにより、脂肪燃焼と筋肉増量が同時に見られた[3]
どの研究も3~6ヶ月という比較的短期間で、脂肪を減らしながら筋肉量を増やすことに成功しています。
また、筋肉が増えやすいトレーニング初心者だけでなく、トレーニング経験があり既にある程度筋肉がついているアスリートを対象とした研究においても、脂肪を減らしながら筋肉をつけることに成功しています。
エネルギーバランスの計算
また、ただ脂肪を減らしながら筋肉をつけることが可能なだけでなく、脂肪および除脂肪体重の増減量から、カロリー収支(摂取カロリーと消費カロリーの差)を導き出すことも出来ます。
以下の表は各組織における1kgあたりの代謝可能エネルギー(kcal)をまとめたものです。[4]
組織 | 代謝可能エネルギー(kcal/kg) |
グリコーゲン | 4207 |
タンパク質 | 4708 |
体脂肪 | 9441 |
除脂肪体重 | 1816 |
除脂肪体重(Lean Body Mass: LBM)とは、体重において、体脂肪以外の、筋肉や骨、内臓などの総重量のことを指します。
例えば、ある人が1ヶ月の期間で脂肪を1kg落とし、除脂肪体重が3kg増加した場合、カロリー収支 = 3 × 1816 – 9441 = -3993kcal となり、
その人の1ヶ月あたりのカロリー収支は -3993kcal、1ヶ月 = 30日とした場合、1日あたりのカロリー収支は平均して -133.1kcal であったことがわかります。
体重1kg ≒ 7,200kcal ?
巷ではよく、「体重を1kg落とすためには約7,200kcal消費する必要がある」というふうに言われます。
ただこれは厳密に言うと間違いです。
上記の表に記載した通り、体脂肪と除脂肪体重のそれぞれが持つカロリー量は異なります。
そのため、例えば体重が1kg減り、仮にその減少分が全て体脂肪であったとすると、カロリー収支は-9,441kcalということになります。
そして逆にその減少分が全て除脂肪体重によるものであった場合、カロリー収支は-1,816kcalということになります。
ただ一般的には体重減少分が体脂肪と除脂肪体重のどちらか片方のみで構成されているというのは考えにくいため、
普通の人が普通に体重1kgを落とした場合、そのうちの7割くらいが体脂肪、3割くらいが除脂肪体重だとすると、
9,441× 0.7 + 1,816 × 0.3 = 7,153.5 という計算式となり、結果的に大体体重1kgを減らすためには7,200kcal 分のエネルギーを消費する必要がある、という理屈なのです。
また、体脂肪は1kgあたり9,441kcalと述べましたが、そのうちの全てが脂肪組織で構成されているわけではありません。
というのも体脂肪は中性脂肪だけでなく水分やタンパク質など、純粋な脂肪組織以外の物質も含まれています。
研究では体脂肪全体のうちの87%が純粋な脂肪組織であると推定されているため、その純粋な脂肪組織を1kg減らすのであれば、9,441kcal × 0.87 = 8,213.67 、大体8,200kcal分のカロリーのマイナス収支を作り出せばよいことになります。
カロリー不足の状態で体重増加
これまでの話を考慮すると、カロリー不足(摂取カロリー<消費カロリー)の状態でも体重が増加することがあります。
先ほどの例はまさにそうで、1ヶ月あたりのカロリー収支は -3993kcal と、消費カロリーよりも摂取カロリーの方が少ないにもかかわらず、
体脂肪が1kg減少し、除脂肪体重が3kg増加しているため、純粋な体重増加を見ると2kg体重が増えています。
体脂肪に比べ、除脂肪体重の方が1kgあたりの代謝可能エネルギーが圧倒的に小さいため、この現象は比較的起こりやすいと言えます。
これはまさに「脂肪を減らしながら筋肉をつける」の典型です。
カロリー余剰の状態で体脂肪減少
逆に、信じがたい話かもしれませんが、カロリー余剰(摂取エネルギー>消費エネルギー)の状態でも体脂肪が減少することがあります。
ただ、この現象を起こすのは至難の業で、体脂肪の減少の5.2倍(9441kcal ÷ 1816kcal)のスピードで除脂肪体重を増やす必要があるからです。
不可能ではないですが、遺伝子やトレーニング歴、カロリーコントロールなど、よほど良い条件が揃わない限り難しいでしょう。
カロリー不足の状態で体脂肪の増加
また、残念なことにカロリー不足(摂取エネルギー<消費エネルギー)の状態を作り出しても体脂肪が増えてしまうこともあります。
その場合とは体脂肪の増加スピードに比べて、筋肉の減少スピードが5.2倍以上になったときです。
ただこのケースは、筋トレをしている限りは、よほどそのトレーニングのメニューが不適切なものでなければ起こらないでしょう。
ただし「筋トレを一切しない」「病気にかかる」「薬物にハマってしまう」といった場合であれば、カロリー不足状態でも体脂肪が増えてしまうことは十分考えられます。
まとめ
この記事では脂肪を減らしながら筋肉をつけることは可能であること、そしてその根拠と研究事例などについて見てきました。
こういったことを知っておくのは非常に重要で、例えばダイエットしながら筋トレしているときに、「ダイエットしているはずなのに体重が変わらない」「むしろ増えてしまっている」と思ってより一層カロリーを制限してしまう可能性があります。
そうなると本当は脂肪を減らしながら筋肉が増やすことに成功していてめちゃめちゃ順調だったにも関わらず、カロリーを制限しすぎて筋肉が落ちてしまう、といったことになりかねません。
特に肥満体型かつ筋トレ初心者の場合は、「脂肪を減らしながら筋肉をつけることは可能」というよりむしろ、「脂肪を減らしながら筋肉をつけるべき」と言えます。
体脂肪率が高いと筋肉をつけるのが困難になってしまうため、カロリー不足(摂取カロリー<消費カロリー)状態を維持して体脂肪を減らしながら、筋トレを行なって筋肉をつけるのが王道です。
それではまた次の記事でお会いしましょう!
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