一般的に脂肪は肥満の原因であることから敬遠されることが多いと思います。
しかし、増えすぎてしまうと問題になるだけで、脂肪自体は体内の大切な構成要素です。
そしてその脂肪細胞には「白色脂肪細胞」「褐色脂肪細胞」「ベージュ脂肪細胞」の3つがあり、それぞれの脂肪において性質や働きが異なります。
目次
白色脂肪細胞
白色脂肪細胞は、私たちが日常でよく使う脂肪を指しており、「内臓脂肪」と「皮下脂肪」に分けることができます。
これらの脂肪は以下のような特徴があります↓
- 皮下脂肪:皮膚の真下に存在する脂肪。必ずしも健康に害を与えるとは限らない。巨大なクッションのような役割を担う。
- 内臓脂肪:臓器を取り囲む脂肪。皮下脂肪に比べて内臓脂肪の方が生活習慣病との関連性が強い。
このように、同じ白色脂肪細胞でも、体のどの部位に付いているかによって健康に与える影響が変わります。
2004年に行われた研究では、何人かの患者が脂肪吸引の手術を受け、皮下脂肪を瞬時に30ポンド(約4.5kg)落としました。しかし、コレステロール、血糖値、トリグリセリドの値は改善されませんでした。[1]
逆に内臓脂肪が健康に悪影響を与えやすい理由としては、「小腸および肝臓へと繋がる門脈と呼ばれる血管と密接な関係を持つから」と考えられます。
内臓脂肪は皮下脂肪に比べ分解が進みやすく、放出された脂肪酸が直接肝臓に流入し、結果的に「脂肪肝」を生じやすいのです。
褐色脂肪細胞
白色脂肪細胞が「エネルギーを貯める」脂肪細胞である一方、褐色脂肪細胞はむしろ「エネルギーを使う(エネルギー消費を高める)」脂肪細胞です。
この褐色脂肪細胞は、以前までは齧歯類では存在するものの、ヒトではほとんど存在しないものと考えられていました。しかし近年では、画像診断技術が進歩したことで、頸部や肩(鎖骨周辺)胸部傍脊柱および腎臓周囲などに存在することが明らかになっています。
褐色脂肪細胞を活性化させることのメリット
- グルコース代謝とインスリン感受性を向上させる[2]
- 骨密度と健康に重要である[3][4]
- センテナリアンの寿命延長に関連するタンパク質であるアディポネクチンのレベルが上昇する[5]
- 長寿に関わるとされる繊維芽細胞増殖因子21(FGF-21)の産生を制御する[6]
褐色脂肪細胞を活性化させる方法
それでは、この褐色脂肪細胞を活性化させるには、どうすればよいのでしょうか?
寒冷刺激
外気温が低くなると、私たちの体は体温を安定化させるために熱産生を増やそうとします。
このときに交感神経活動が活発化し、その結果褐色脂肪細胞が活性化されます。
実際に、夏に比べて冬の方が褐色脂肪細胞がより活発に働くことがわかっています。[7]
意図的に外気温を下げたい場合には冷水シャワーや水風呂などが選択肢として挙げられます。
運動
褐色脂肪細胞は交感神経活動を高めることで活性化されるため、運動もその1つの方法です。
運動は褐色脂肪細胞を活性化する以外にも、体組成を改善する他のホルモンにも良い影響を与えます。
有酸素運動、無酸素運動ともに、ミトコンドリア密度を向上させ、エネルギー産生を高めることにつながります。
睡眠
しっかりと眠れないと太りやすく、血糖値も上がりやすくなります。
睡眠ホルモンであるメラトニンは、褐色脂肪にも影響を与えます。
ある研究では、メラトニンが多いラットは褐色脂肪もより活性化していました。[8]
ケトジェニックダイエット
インスリンは褐色脂肪の活性化を打ち消し、食べたカロリーを白色脂肪として蓄積させる傾向があります。
一方、インスリンと血糖値が低いと、ケトーシスにより自分の体脂肪をより多く燃焼させることができます。
ケトーシスを誘発するケトジェニックダイエットでは、褐色脂肪組織のミトコンドリアタンパク質が増加します[9]。
ベージュ脂肪細胞
ベージュ脂肪細胞とは、白色脂肪組織内において褐色脂肪細胞に近い性質を持つ細胞のことを指します。
最近になってこの細胞に関する詳細な解析が進み、この細胞では褐色脂肪細胞に比べ、遺伝子発現のパターンが必ずしも同じではないこと、
それに加えて見た目が白色と褐色の中間(ベージュ色)であるといった理由からベージュ脂肪細胞と名付けられました。
このベージュ脂肪細胞が形成されるメカニズムとしては、寒冷刺激などを受けることで、
- 既存の白色脂肪細胞がベージュ脂肪細胞に変化
- 白色脂肪組織内の未分化の細胞がベージュ脂肪細胞に変化
の2つのいずれかによるものだと考えられていますが、全容はまだ明らかにはなっていません。
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